第1回 狭心症・心筋梗塞とは
財団法人心臓血管研究所所長 相澤忠範
●どのような前兆や自覚症状がありますか。
典型的なのは「胸が締めつけられる」「重い物を胸の上にのせられた感じ」「何か息苦しい感じがする」といった症状です。忙しい朝の出勤時などに起きることが多いのですが、急ぎ足で何分か歩いたり、坂道や階段を上ったりすると息苦しくなるということもあります。
気をつけなくてはならないのは必ずしも心臓に痛みを感じるわけではないということです。例えば、のどや奥歯の痛みが
あげられます。初めにのどが痛くなり、次第にそれが奥歯の方に移り、しびれるような痛みになっていきます。のども詰まるように感じます。人によっては、その痛みが胸の方に降り、胸骨(胸前面中央にあって肋骨をつないでいる骨)の裏辺りが焼けるように痛くなる症状が出ます。肩に痛みを感じる人も多いです。特に左肩から左腕にかけて、しびれ、重さ、だるさを感じます。
また胃の下の辺りの痛みも多くみられます。胃潰瘍(いかいよう)や胃けいれん、胆石で見られるような胃周辺の痛みが、実は心筋梗塞だったということも非常に多いのです。これらが「坂道や階段のような場所で起こり、休むと治る」ような状態なら狭心症の可能性が高いです。もちろん安静時に痛みが起こるときも注意してください。
●循環器内科を受診するべき症状とは?
運動中に、高い頻度で息苦しい症状が起こる場合は、要注意です。例えば「1階から4階まで階段をのぼると、必ず息苦しくなる」など、一定の運動時に起こるケースでは、心臓疾患を真っ先に考慮し、迷わず循環器内科に行くべきでしょう。
また安静時に、歯や胸骨が痛むというような症状では、歯医者や接骨院に行かれる方々が多いと思いますが、もしそこで大きな問題が見つからなければ、循環器内科あるいは一般内科の病院を受診することをおすすめします。
専門医であれば、胃が痛いといわれる患者さまにお話しを聞いただけで、「心配がないからゆっくり様子をみてみよう」という場合と「大至急検査しなければ」という場合を判断できます。また、症状から重症度が分かりますので、それを元に検査・治療の手順が決められていきます。
●狭心症と心筋梗塞との大きな違いは何でしょうか。
心臓の筋肉が死んでしまい、その機能を失ってしまうのが心筋梗塞で、症状が一時的でしばらくすると回復するのが狭心症です。この違いは冠動脈が完全に詰まってしまうか、一時的に血液が不足するかの差によるものですが、狭心症が悪化して、心筋梗塞になることもあります。また、心筋梗塞の特徴として、突然の発症が非常に多くみられます。
現在では、心臓専門のCTで、冠動脈をある程度は細かく診ることができるようになりましたが、そのような検査だけで、心筋梗塞が将来発症するかどうかを診断することは困難です。というのも、心筋梗塞はそんなに深刻でない病状からでもいきなり発症する場合があるからです。例えば、狭心症は冠動脈の太さが通常より60%以上狭くなると起きる可能性が高まります。一方で心筋梗塞の場合、血管が25~30%狭くなっただけで、(小さな発作が数回あるのですが、ほとんど感じられないまま)突然発症することがあるのです。なぜなら狭窄(血管が狭くなる状態)の度合いが軽くても、動脈内の(コレステロールが固まってできた)病巣が破綻することがあるからです。そうなると、その破綻部に血栓(血のかたまり)ができて、血管を塞いでしまいます。こういったことからも狭窄が軽いというだけで必ずしも安心はできないのです。
●早期発見・早期治療で、その後の病状に差は出てくるのでしょうか。
基本的には、早期発見、早期治療が病状の深刻化を避けるために最も大切なことです。心筋梗塞を起こしてから、治療を受けた場合、回復する部位は限られることが多いですが、逆に狭心症のレベルで診断を受ければ、有効な治療により心筋に全くダメージを与えずに済むこともあります。
先にあげた自覚症状や、体調面で気になることがあったら、必ず心臓の専門医の診断を受けてください。特に冠動脈が狭くなっていると指摘を受けたことのある方や、高血圧、糖尿病、肥満(中でも内臓脂肪型肥満)、コレステロールや中性脂肪が高い方は要注意です。これらは狭心症・心筋梗塞の危険因子になっています。また、メタボリックシンドロームなども十分気をつけるべきでしょう。突然の発症を防ぐためにも、定期的な検査受診をおすすめします。
心筋梗塞によっては、痛みを覚えない場合もありますし、軽い症状でおさまる場合もあります。自ら感じる症状の強さと病気の重症度は、必ずしも一致しません。何らかの異常症状があったら、その強弱に関わらず早期の受診が大切なのです。

【プロフィール】
福島県立医科大学卒業。東京医科歯科大学医学部付属病院、平塚市民病院循環器内科を経て、1979年から(財)心臓血管研究所付属病院
勤務。2005年より、同研究所所長。
大学卒業以後40年間、心臓カテーテル検査および治療に従事。虚血性心疾患における心臓カテーテル治療、冠動脈インターベンションに造詣が深い。