ドクターズコラム

ハートケア情報委員会のドクターが狭心症・心筋梗塞の治療法など、狭心症・心筋梗塞に関するさまざまな情報をお伝えします。

第4回 最近の傾向とリスクファクター

財団法人心臓血管研究所所長 相澤忠範

●心臓病は、日本における死因の第2位と聞きましたが?

財団法人心臓血管研究所所長 相澤忠範 がんには胃や肺など色々な臓器のものがありますが、狭心症・心筋梗塞などの虚血性心疾患は、単一臓器で、単一疾患、しかも冠動脈(心臓の血管)というごく限られた臓器としては、極めて数の多い病気です。米国では、心臓病が死因の
第1位であることも背景に、国民の関心も非常に高いのですが、日本においては現実に心臓病の患者さんが増加しているにもかかわらず、あまり興味を持たれていないのは残念なことです。
 あるアンケート調査では、がんについて様々なことを知りたいという方が最も多く、その次は脳卒中です。そして心臓病は、かなり離されての3位というのが現状です。もう少し皆さんに心臓病について関心を持っていただきたいと思っています。


●狭心症・心筋梗塞を引き起こす原因について教えてください。

 高血圧、高脂血症、糖尿病、肥満、喫煙が主な原因となります。この中で最も強力なものは、高血圧と高脂血症です。健康診断などで示される基準範囲を大きく超えたレベルの高血圧は、そのままにしていると非常に危険な状態になりますが、多少ならば薬で下げることが可能です。高脂血症も薬により、ある程度改善することができます。
 次に危険なのは糖尿病です。長期的に見た場合には、この糖尿病が最大のリスクとなります。糖尿病をコントロールができないと心臓病をいくら治療しても、再発を繰り返すことになります。また、糖尿病がすすみ、人工透析を受けている患者さんは、治療後の再狭窄(再び血管が狭くなったり、つまったりすること)や血栓症の危険性の高いことが、データで裏付けられています。
 糖尿病は症状がほとんどないため、自覚することが難しい病気です。糖尿病の治療は、薬より食事です。ご本人がしっかり自覚して食事に気を使ったり、適度な運動をこころがかけたりすることが、病状の改善に最も効果をもたらすといえるでしょう。


●メタボリックシンドロームが話題になっていますが。

 生活習慣病と根本的な違いはないのですが、病態のとらえかたに違いがあります。生活習慣病は、バランスの崩れた食生活や運動不足など、日常における様々な行動から引き起こされる病気のことを指しますが、メタボリックシンドロームは、基本的には分子生物学的(分子レベルで生物現象を扱う)概念です。メタボリックシンドロームでは、内臓肥満から始まり、インスリンの抵抗性が高まり、サイトカインなどの有害物質が遊出してきて、体調の異常や高脂血症、高血圧が発症してくるという一連の流れで疾病を捉えます。ただ一般の方にはメタボリックシンドロームというよりは、生活習慣病といった方がなじみやすいのではないでしょうか。


●遺伝や性格も狭心症・心筋梗塞の原因であると?

 遺伝的要素は強力な因子の一つです。心筋梗塞の発症者が一人もいないような家系からは、発症の確率が少ないようです。一方で、“がん家系”などと同様に、日常生活に気を配っていても発症することもあります。しかし、家族に誰も狭心症や心筋梗塞の人がいないからといって、安心はできません。一般的には、生活習慣が決定的な因子になってきます。
 また、よく「タイプA行動様式」※の方がかかりやすいといわれていますが、これは性格ではなく、その人の行動様式によることを示すものです。年齢には余り関係がないようで、例えば、「競争心が強く神経質なタイプA」などと表します。あまり、いらいらしたり、気にしすぎたりすることは、心臓にも良くないようです。
 それとは別に、女性の場合は、更年期が始まるころから注意が必要です。若い女性の場合の心臓疾患といえば、不整脈が圧倒的に多く、狭心症や心筋梗塞の患者さんはそれほど多くありません。全体的に、男女差ということでは、男性が圧倒的に多いのですが、女性の場合、高齢になり女性ホルモンが減少する閉経後に発症することが多いようで、特に70歳代になると女性の患者さんの方が男性よりもふえてくるようです。これは女性ホルモンに影響をあたえているエストロゲンが減少することにより、コレステロール値が上がることが原因となっているといわれています。


※血液型のことではなく、次のよう行動を示す人のこと。また、性格ではなく、行動様式のことである。     ①目標を達成しようとする欲求が強い人 ②競争心が強い人 ③つねに周囲から高く評価されたがり、出世欲も強い人 ④つねに多くの仕事にのめりこむ結果、締め切りに追われる人 ⑤精神的、肉体的活動速度をつねに速めようとする人 ⑥精神的、肉体的に非常に敏感な人。


●最近の患者さんに変化はありますか?

 以前に比べるとご高齢になっても元気な方が多く、中には90歳を超えて冠動脈バイパス手術や冠動脈インターベンションを受ける方もいらっしゃいます。

財団法人心臓血管研究所所長 相澤忠範
【プロフィール】
福島県立医科大学卒業。東京医科歯科大学医学部付属病院、平塚市民病院循環器内科を経て、1979年から(財)心臓血管研究所付属病院
勤務。2005年より、同研究所所長。
大学卒業以後40年間、心臓カテーテル検査および治療に従事。虚血性心疾患における心臓カテーテル治療、冠動脈インターベンションに造詣が深い。

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