第6回 問診の重要性
埼玉県川越市 平成クリニック理事長 高山 泰雄
●先生は、患者さんにはどのようなお話しをされるのですか。
当院では、来院時に、ご自分で計測いただいた入浴時の体重、おへその周りの長さを患者さんに報告してもらっています。そしてお一人ずつ時間をかけて、それらに対する今までのデータの経過や注意すべきことをお話しし、食事の指導を行います。
メタボリックシンドロームという言葉が、テレビや新聞を賑わせていますが、「メタボリックシンドロームの何がいったい問題なのか?」、「どこを、どういう状態で測定するべきなのか?」について正しい理解がされていないような気もします。良くある状況として、皆さんが自分の感覚だけで測り、計測の位置がバラバラで正確さに欠けるのデータを持参するということがあります。色々なところで「メタボリックシンドロームは大変だ、大変だ」と言われますが、「何が、どのように大変なのか?」という根本的なところから、きちんと理解することが重要です。「多分、何か大変なことが起こるんだろうなあ」ということで、終わってしまわないためにも、診断方法も含めて、きちんと伝えていくことが大切です。
●先生のクリニックでは、待合室の壁に「内臓脂肪型肥満」の説明書きが貼られていますが、患者さんは読んでいきますか。
半ば強制的に読んでもらっています(笑)。初診の患者さんに対しては、あの壁新聞を読んでから、おへその周りを測ってもらうようにしています。正しく計測することは重要です。
肥満は万病のもとで、なかでも内臓脂肪型肥満は要注意。息を軽く止め、おへその高さで腹囲を測り、男性で85センチ以上、女性で90センチ以上の場合は、内臓脂肪型肥満の可能性大です。内臓脂肪型肥満になると、インスリンの働きが鈍り、糖尿病や高脂血症、高血圧ひいては、狭心症・心筋梗塞や脳梗塞の原因となります。
●やはり気になったら、医師に診てもらうべきですね。
「何か、胸が痛い」とか、あるいはもっと「とんちんかん」に思えるようなことでも結構です。来院すること自体は、全く問題ありません。不調を感じたら、まずは医師に相談してみることをお勧めいたします。問診は、初診の方で15分~30分くらい話すこともあります。多くの場合、問診でほとんどのことが分かります。たまに、患者さんが自分で自分の病名を勝手に決めつけてしまい、医師のいうことを受け入れにくくなることがあります。「自分は絶対に狭心症だ」といって薬の処方を望まれますが、正しい診断と、それに対する適切な治療を受けることが、早期予防・治療の第一歩です。
また、よく狭心症の不安があって来院された患者さんに「先生、狭心症って一体どんな症状があるのですか?」と聞かれます。しかしその問いに対して、私は「こういうものです」とは答えないことにしています。なぜなら、患者さんが自分自身で本当に感じたものを、そのままお話してもらい、正確な診断をするためにも最初から色眼鏡をかけることは極力避けたいからです。もし、体調に異変を感じているときに「背中痛いでしょう?」など聞くと、本当に傷みなど感じていなくても「そういわれてみれば痛いかも・・・」などといった間違いや思い込みの原因にもなりかねません。「症状を感じるままに話してみてください」と話を促します。患者さんの症状を誘導することなく、患者さんの感じるままを聞くことは、私たち医師にとっても適切な診断をする上で大切な作業です。患者さんも、自分の体調に関する先入観を持たずに診療所に来て下さい。
●生活習慣病の治療はご主人と奥さんが一緒に勉強していくようなことが必要でしょうか。
そういう熱心な方も中にはいらっしゃいます。しかし、たまに困ってしまうケースもあります。夫婦で通院される方がおられますが、お二人のそれぞれのお話が微妙に食い違うことがあるんですね。体重がどんどん増えているのに、ご主人は「食べていない」と言われ、奥さんは「食べてばかりで困るんですよ」と逆のことをおっしゃいます(笑)。果たしてご主人と奥さんのどちらが正しいのか?私の診療所では、時々このようなホームコメディみたいなことが起こるのです。
食生活の変化や塩分の制限指導が浸透してきたことにより、日本における脳出血は、急激に減ってきています。しかしながら、反対に、食生活の変化によって、脳梗塞や狭心症・心筋梗塞など、血管が詰まることにより発症するタイプの疾患は増えてきています。ある報告によると脳梗塞を発症する人は狭心症や心筋梗塞を引き起こしやすいというデータもあります。今後、狭心症や心筋梗塞に対する国民の意識が高まり、注意が向けられるようにならなくてはいけないと思います。

【プロフィール】
群馬大学医学部卒業。
群馬大学医学部付属病院第二内科、同大学院医学研究科、東京
女子医大心臓血圧研究所内科、立正佼成会付属佼成病院麻酔科、
榊原記念病院内科、米・スタンフォード大学病院循環器内科留学を
経て、1989年、医療法人社団平成クリニックを開設。
循環器疾患を専門に地域医療に従事。