第24回 気になる"タバコ"の心臓への害とは?
埼玉県川越市 平成クリニック理事長 高山 泰雄
●喫煙が心臓に悪いというのはよく言われますが、具体的にどのような影響があるのでしょうか?
喫煙が動脈硬化を促進することは、疫学的にいわれています。また、若年者で心筋梗塞になった患者さんのほとんどに、喫煙暦があります。しかし、メカニズムについてはまだまだ解明されていないことがたくさんあります。
実験では、マウスにタバコの煙を吸わせると、血液中の様々な成分が血管壁に浸み込みやすくなり(血管壁の透過性亢進)、この原因は、酸素不足などによる内皮細胞(血管壁の一番内側の細胞)の障害と考えられています。血管壁に血液中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が浸入し蓄積することにより動脈硬化が始まると考えられています。血管壁の透過性亢進により、LDLコレステロールの血管壁への浸入が増強される結果になります。
タバコに含まれるニコチンは、血管を強烈に攣縮(れんしゅく)(痙攣性の収縮)させます。くも膜下出血に伴って、攣縮が生じた脳血管を調べると、血管壁の構造が壊されています。
喫煙による血管壁の透過性亢進および血管壁の障害は、動脈硬化の発生および進展に大いにかかわっています。大気汚染が進むことによって、心臓病が多くなったという報告もありますが、空気汚染と喫煙が合わさることで、二次的、三次的にも心臓病が起こりやすくなります。
●タバコはやめるとすぐに良い効果がでてくるのでしょうか?
タバコはいつやめても良い効果がでます。気づいたときにすぐにやめるのがベストです。年齢や個人差がありますが、タバコの害のひとつであるニコチンは3~5年経つとその害を体内から除くことができるといわれます。
男女別に年齢、HDL・総コレステロール、血圧、喫煙、糖尿病の心臓病危険因子の程度により点数付けし、心臓年齢を計算する方法がありますが、この計算によると、合計点が多い程、心臓年齢が高くかつ心疾患にかかりやすくなります。驚くべきことに男性において喫煙は4点、糖尿病は3点と、喫煙者には糖尿病の人以上の点数が付けられています。4点は総コレステロール280以上、未治療高血圧(収縮期圧)160以上に相当します。女性においては、喫煙は3点と糖尿病より1点低く、総コレステロール200-239、未治療高血圧(収縮期圧)130程に相当します。いずれにしても、喫煙者は糖尿病を患っている人と同じくらい心臓病のリスクを抱えているということになります。
禁煙により、HDL(善玉コレステロール)が増加します。HDLの増加は心臓年齢を引き下げます。禁煙および他の心臓危険因子を少なくし、心臓を若返えらせましょう。
●タバコを吸っている患者さんに特徴的なことなどはありますか?
私がこれまで診ている患者さんに比較的共通していると思われるのは、喫煙者には糖尿病・高脂血症・高血圧などの合併症が多く、とくに狭心症や心筋梗塞にかかりやすいということです。仮に喫煙により心臓病が起こらなくても、慢性気管支炎などが合併した場合には肺機能が低下し、二次的に心臓に悪影響を及ぼします。
禁煙すればすべての危険因子が取り除かれるわけではありませんが、薬を使って高血圧、高脂血症、糖尿病を治療することに比べ、薬の副作用を心配する必要のない禁煙を実施したらいかがでしょうか?
心臓病で私の病院を訪ねてきた方には、基本的にタバコをやめるように指導していますが、いくら薬やパッチを使っても、タバコは、本当にご本人が「やめる!」と決心しないとやめられません。タバコをやめるということは、まさにご本人の意識次第です。何かをきっかけに決心する方が多いようですが、すぐに心が揺らいでしまう方も多いので、ご家族やご友人に宣誓してスタートするとよいでしょう。

【プロフィール】
群馬大学医学部卒業。
群馬大学医学部付属病院第二内科、同大学院医学研究科、東京
女子医大心臓血圧研究所内科、立正佼成会付属佼成病院麻酔科、
榊原記念病院内科、米・スタンフォード大学病院循環器内科留学を
経て、1989年、医療法人社団平成クリニックを開設。
循環器疾患を専門に地域医療に従事。