第9回 虚血性心疾患を重篤にしないために
埼玉県川越市 平成クリニック理事長 高山 泰雄
●心臓の疾患に関して、食事や運動のほかに気を付けなければならないことはありますか。
ストレスは高血圧の大きな要因になります。最初はストレスにより一時的に血圧は上がりますが、次第に心臓への負担が大きくなると血圧も下がらなくなります。血圧が高い状態が続くと、ゆくゆくは心筋が異常に厚くなったり、心臓の内腔が異常に大きくなったりする心筋症のような形になっていくわけです。長い年月、ストレスにさらされて仕事をしている方は、心疾患に十分な気配りをするべきでしょう。強烈なストレスに晒されると狭心症や心筋梗塞とは異なる機序により突然死を引き起こされます。もちろん遺伝も危険因子の一つです。肉親が55歳以下で狭心症や心筋梗塞になった場合は、特に注意してください。
●薬をきちんと飲み続ける必要がありますが、これに関して患者さんはどうですか。
服薬指導は、この疾患では特に重要な要素です。通常、私の診察室のカレンダーには、薬を処方する日に目印を付けているのですが、特にご高齢の方の場合では、飲んだり飲まなかったりという方も多く、「薬が余ってしまった」ということが頻繁に起こります。このような場合、その度に飲んだ錠剤の数を確認し、薬の数を調整しなければなりません。若い方でも「薬が余る」という状況が散見されます。「ちょっと遊びに行った時に、飲み忘れてしまった」といわれるようなケースです。また自己判断で止めてしまう方も多いのです。「もう症状がないから飲まなくてもいい」と止めてしまう方がおられますが、そういう方は病気を悪化させる傾向にあります。自己判断は危険といわざるを得ません。
薬を飲むことへの理解が浅いとどうしてもルーズになったり、自分で勝手に判断を下したりしますので、患者さんに説明する際には「この薬がどんなに大切なものか」をわかってもらうようにしています。例えば、血圧の薬を服用する必要がある患者さんの中には、「飲み始めたら、一生飲む必要がある」と聞いたが、「飲みたくないのに処方されてしまった。だから飲みません」と、服薬を止めてしまう方がいます。そんな患者さんには、可能ならばすぐには薬を出さずに2ヵ月~3ヵ月は食事療法などで頑張ってもらうことにしています。そこで血圧が下がらなかったことを納得してもらい、「薬を飲みましょう」と理解しあってから処方します。このように患者さん自身に服用の重要性を理解していただいてから処方しないとうまくいきません。同時に、「経過が良ければ薬が半分で済んだり、1日おきになるかもしれませんよ」などと、前向きに話を進め、必要な薬剤を必要な量服用し、血圧などを正常化(個々により目標値の差異はあります)するよう積極的になってもらえるようにしています。
●健康診断の活用について、先生からメッセージなどありますか。
会社の健康診断などを、もう少し活用した方が良いと思います。健康診断ではいろいろな検査をします。狭心症・心筋梗塞の危険因子に関しても網羅されていますので、自分の心疾患への危険度を確認することができます。
健康診断の結果データを会社の産業医などに見てもらい、きちんとしたアドバイスをもらうことが必要でしょう。「A、B、C」という判定を見るだけでは、健康診断の活用は十分ではありません。
通常、生活改善をしてから、「コレステロールが下がる」「血圧が下がる」などの効果が出るまでの期間は2カ月~3カ月かかります。ですから、なかなか数値が良くならないからといって、生活改善を1ヵ月くらいで止めてしまわず、とにかく続けてください。長期的な視点で生活習慣に気をつけなければ、狭心症・心筋梗塞の予防効果は期待できないことも、また覚えていただきたいことですね。

【プロフィール】
群馬大学医学部卒業。
群馬大学医学部付属病院第二内科、同大学院医学研究科、東京
女子医大心臓血圧研究所内科、立正佼成会付属佼成病院麻酔科、
榊原記念病院内科、米・スタンフォード大学病院循環器内科留学を
経て、1989年、医療法人社団平成クリニックを開設。
循環器疾患を専門に地域医療に従事。