第31回 心臓病の場合、インフルエンザ対策はどうすべきか?
財団法人心臓血管研究所所長 相澤忠範
●すでに国内でも死亡者が出るに至った、新型インフルエンザ。基礎疾患との関係が指摘されますが、そもそも基礎疾患とはどのようなものでしょうか?
インフルエンザが重症化する基礎疾患とは、慢性呼吸器疾患、慢性心疾患、慢性腎疾患や糖尿病、免疫不全の状態などがあります。そのほか、ハイリスク群と呼ばれる中に65歳以上の高齢者、妊娠24週以降の妊婦があげられます。免疫が弱くなっていたり、ウイルスが活発化しやすい状態に体がおかれていたりすると、インフルエンザがきっかけとなって、呼吸器不全や肺炎を起こしたり、また、基礎疾患である持病が悪化したりします。
慢性呼吸器疾患には肺気腫、気管支喘息、肺線維症などがあり、慢性心疾患には弁膜症、心筋症や冠動脈疾患による慢性心不全などがあげられます。慢性腎疾患では血液透析患者、腎移植患者などがあります。
ただ、いずれも軽症のものであれば、すぐに生命に関わると言い切るのは難しいです。糖尿病でも少しメタボリックのリスクがあるという程度では、即重症化という可能性は低いでしょう。ただし、糖尿病性網膜症や糖尿病性腎症など糖尿病が重症化している場合は、インフルエンザ重症化のリスクとなります。
●インフルエンザは呼吸器、心臓病は循環器と、機能が違うと思うのですが、なぜ心臓病がある人は重症化しやすいといわれるのでしょう?
ハートケア情報委員会のページに設けてある「インフルエンザと心臓病の関係」にもありますが、2007年の研究発表およびそれ以前の研究から、インフルエンザは、急性で重篤な炎症反応を体内にひきおこすことで、動脈硬化性プラークの不安定化や破裂をひきおこし、心血管事故の引き金になるのではないか、ということが指摘されています。この2007年の発表では、インフルエンザの流行時に急性心筋梗塞の死亡率が1.3%上昇したとされています。
では、狭心症などの心臓病があると、どのような状態であれ、すべて命にかかわる重症化が懸念されるかというと、まだ分からないというのが実情でしょう。ただし、心臓に持病があると、肺の鬱血(うっけつ)が起こりやすくなっていたり、感染に対する抵抗力が弱くなっていたりして、重症化しやすいということは言えるでしょう。
いずれにしても、心疾患のある人は、早目にインフルエンザ対策を主治医に相談して下さい。
●心臓病がある場合、インフルエンザのワクチンによって合併症が起こると聞いたことがあるのですが、予防接種をして大丈夫でしょうか?
インフルエンザのワクチンも然りですが、いずれの薬も、一定程度の副作用やそれに伴う合併症などは避けられないというのが実情です。インフルエンザワクチンの副作用としては、脳脊髄炎、ショック、発熱、頭痛、けいれん、肝機能障害などがあります。ただし、副作用や合併症がおこる確率は、非常に低いものとなっています。急性期の病気などでワクチンの接種ができない、などという場合を除いて、基本的にワクチンを接種することによって得られるメリットとデメリットを比較すると、メリットが圧倒的に高いというのは事実です。受けたことのある方はお分かりかと思いますが、ワクチンの接種に当たって、医師は問診と体温測定をします。もちろん、この問診の段階で、基礎疾患のある人は医師にお伝えいただくことになっています。そして、万が一、ワクチンを接種して合併症が起こっても、一定の条件下ではありますが救済措置が定められています。
合併症を心配して、最初からワクチンの接種を避けずに、医師に相談してインフルエンザに備えましょう。
■関連リンク:
インフルエンザと心臓病の関係|ニュース|ハートケア情報委員会
http://www.heartinfo.jp/news/article/post_49.php

【プロフィール】
福島県立医科大学卒業。東京医科歯科大学医学部付属病院、平塚市民病院循環器内科を経て、1979年から(財)心臓血管研究所付属病院
勤務。2005年より、同研究所所長。
大学卒業以後40年間、心臓カテーテル検査および治療に従事。虚血性心疾患における心臓カテーテル治療、冠動脈インターベンションに造詣が深い。