第32回 寒さと心臓病の関係は?
東海大学医学部付属病院教授 伊苅 裕二
●最近急に冷える日が多くなってきました。寒くなると心臓病になりやすくなるのでしょうか?
寒い時の心臓病といえば、外国の例ですと、クリスマスにレストランに食事にいって、おいしい食事と適度にアルコールが入った状態で、さあ帰ろうと雪の積もった外に出た瞬間、ウっと苦しくなって倒れてしまう、というのがその典型でしょう。
寒さの真っただ中という時期よりも、ちょうど今のように暖かいと思っていたら急に冷え込んできた、という時期の方が、実は心臓にはストレスがかかっています。これは、自律神経の関係で、温かいところから寒いところに急に行くと、心臓の血管が攣縮(れんしゅく)(痙攣性の収縮)を起こしやすくなるからです。この急激な温度変化というのが心臓にはよくありません。
この気温差による心臓へのストレスを避けるには、外出する際は、部屋の中にいる時点で防寒対策を十分にして外に出るということです。外に出てから、コートを着るなどの防寒対策をしても、いったんは冷たい空気に体がさらされることになりますので、あまり意味がありません。アルコールで体が暖まっている時はなおさらです。お酒のせいで体がぽかぽかしている状態ですので、寒い中を薄着で“酔いざまし”といって歩くのは、心臓にとっては大きな負担です。寒さは心臓病を誘発することになりますので、対策はしっかりしましょう。
●住居において、気をつけるべきことがあれば教えてください。
これは、マンションよりも一戸建てにむしろ起こりやすいのですが、リビングなど人の集まるところは暖かいけれども、寝室など一定の時間しか使わないようなところは冷え込んでいるなど、部屋によって温度差があることです。たとえば、日本に古くからある木造家屋の風呂場はそのよい例です。他の部屋を暖房器具などで温めていても、風呂場はたいてい冷え込んでいます。体が温まった状態で、風呂に入ろうと脱衣所で服を脱ぎ、ぶるぶる震えながら温かい湯を浴びるというのは、短時間に気温差の激しい環境に身を置くことになります。特に、温まった状態から室外とほとんど変わらない浴室の気温にさらされることは心臓にとって大きなストレスになるのです。
事前に部屋を暖めておくなど、急激な温度変化に体をさらさないようにすることが、住居での心臓病予防の一つになるでしょう。
●冬の心臓病はどのような特徴がありますか?
これは私の印象ですが、冬になると、夏場は耐えられたのに、なんとなく胸に圧迫感を感じる、動きづらくいと感じるようになった、というご高齢の患者さんが多くなるように思われます。実際、このような患者さんの冠動脈を見てみると、3本の血管のうち2本あるいはすべてが詰まっているというのを多く見受けます。このように、“温かい時期にはさほど感じなかったのに、寒くなってきてから、ちょっと動くと苦しくて耐えられなくなった”、“去年までは、朝起きて家の前を掃いて、ご飯作ってというのが普通にできていたのに、今年は疲れてしまってできない”など、痛みでなくても、これまでとは違うような異変を感じた場合は、狭心症であることも多いのです。特にご高齢の方は、「年だから」と片付けてしまうことが多いですが、心臓病の可能性もありますので、我慢せず病院に行ってみてください。
また、気温の話とは別ですが、狭心症や心筋梗塞は、若い人の場合は、ある日突然血栓が詰まって起こるというのが多いですが、ご高齢の方は、じわじわと少しずつ動脈硬化が進み、この間まででできていたことがきつくてできなくなった、といって発見されることがしばしばあります。現在は入院期間も数日で、胸を開かずに治療できるカテーテルという方法もあります。治療後は、これまでと同じような生活に戻ることもできます。冬になってなんとなくしんどくなった、という症状があった場合は、怖がらず医師に相談してみてください。
■関連リンク:
心臓病の治療|治療後のハートケア|ハートケア情報委員会
http://heartinfo.jp/cure/002.php
よくある質問[ その他 ]|ハートケア情報委員会
http://heartinfo.jp/faq/05.php
第33回 年末年始の生活習慣に注意!|ドクターズコラム|ハートケア情報委員会
http://heartinfo.jp/column/article/post_26.php
【プロフィール】
名古屋大学医学部卒業。
東京大学医学部にて医学博士取得。
三井記念病院、ワシントン大学、再び三井記念病院勤務を経た後、
現在、東海大学医学部付属病院(神奈川県伊勢原市)教授。
循環器内科学、心血管インターベンション、血管生物学を専門とし、
数々の論文を執筆。カテーテル等の医療機器の開発にも従事。