ドクターズコラム

ハートケア情報委員会のドクターが狭心症・心筋梗塞の治療法など、狭心症・心筋梗塞に関するさまざまな情報をお伝えします。

第43回 心臓病、市販薬で大丈夫?

財団法人心臓血管研究所所長 相澤忠範

●3年ほど前から、時々胸がしんどくなったので市販の薬を飲んでいます。やはり精密検査を受けた方がよいのでしょうか。(女性)

財団法人心臓血管研究所所長 相澤忠範 このように「市販薬を飲んでいても大丈夫ですか」といったような質問は、意外とよく受けるのですが、実は、これはとんでもない話です。“胸がしんどくなった”ということで、痛みなのか、息苦しさなのか、どのような症状なのか分からないので何とも言えませんが、いずれにしても「胸が苦しいからとりあえず、市販薬」というのは絶対にやめてください。胸が苦しいというのは、ちょっとのどが痛いとか、くしゃみが止まらないなどの普通の風邪とは明らかに違います。胸に違和感があるというのは、一歩間違うと大変危険な状態になります。ですから市販の薬ではなく、まずは検査をすることが大前提です。とりあえずは市販薬という発想は、今日を限りにすっぱりとやめてください。

 胸の痛みや違和感などある症状に対して、市販薬を飲んで大丈夫かどうかという判断は、医療に専門的に携わっていない人には、まずできません。万が一、心筋梗塞の兆候であった場合、命を落とすこともあります。心筋梗塞の中には、よく言われているようなひどく重い典型的な症状が現れることなく、比較的軽い症状に感じたり、何の前触れもなく突然起こるケースも珍しくないのです。逆に言うと、症状らしきものを感じるものの、何も病気がなければ、薬を飲む必要もないのです。

 昔は、狭心症だとするとニトログリセリンしかなく、医療機関で処方してもらっても同様でしたが、現在では、狭心症の治療薬はいろいろあります。たとえば、動脈硬化を起こしている血管には、プラークといわれるコレステロールが固まってできた病巣が詰まっていますが、基本的にこれを取り除くことは難しいとされています。このプラークをできるだけそれ以上育たないように、あるいは極端に言うと少し減らすよう退縮させるように根本的に治していって、冠動脈の中が狭くなることを防ぐような薬もあります。また、痙攣が加わって発作を起こすのであれば、痙攣をきれいにとって起こさないようにする薬もあります。痙攣は発作を起こすことで、血栓と呼ばれる血の塊ができ、これが脳梗塞や心筋梗塞の原因となることがありますので、血が固まらないような役割を果たす抗血小板薬などと組み合わせて服用することで、かなり安全に予防することができます。それでも発作が治まらない、ということであれば、冠動脈インターベンションやバイパス手術で治療することができます。

 心臓というのは止まってしまうと命を維持することができません。その意味で、体の中でももっとも大事な臓器です。だからこそ、胸が痛いから薬を飲んでやり過ごそうとするのではなく、きちんと調べて何をすべきかをしっかりと考えなければなりません。

 40~50年ほど前のニトログリセリン以外、薬の選択肢がない時代であれば、このようなご質問もあり得たでしょう。しかし、いまは薬もいろいろな種類のものがあり、その病状に応じてきちん治療することもできます。心筋梗塞を起こした時、冠動脈の詰まった箇所が非常に致命的な部分であったり、病院が近くにないなど発症時の地理的条件によっては、命を落とすことが珍しくありません。皆さんの周りにも直接の知り合いでなくても、知り合いの知り合いくらいのレベルでは救命が間に合わず、心筋梗塞で亡くなったという方が一人はいらっしゃるのではないでしょうか。突然死を防ぐためにも、胸に違和感があるのであれば、精密検査を受けるべきです。現在の日本は、症状があって病院に行った場合は、健康保険が適用されますので市販薬を買うお金に少し足せば、専門医にきちんとした診察と診断をしてもらえます。胸の痛みや違和感を緩和させるという薬を、一般の風邪薬や胃腸薬という感覚で使うのは大変危険です。命に関わることがありますから、絶対に避けてください。


■関連リンク:
第16回 狭心症と診断されるまで 専門医への相談が一番の近道|ドクターズコラム|ハートケア情報委員会
http://heartinfo.jp/column/article/post_9.php
第1回 狭心症・心筋梗塞とは|ドクターズコラム|ハートケア情報委員会
http://heartinfo.jp/column/article/1_2.php
第14回 狭心症について|ドクターズコラム|ハートケア情報委員会
http://heartinfo.jp/column/article/post_7.php

財団法人心臓血管研究所所長 相澤忠範
【プロフィール】
福島県立医科大学卒業。東京医科歯科大学医学部付属病院、平塚市民病院循環器内科を経て、1979年から(財)心臓血管研究所付属病院勤務。2005年より、同研究所所長。
大学卒業以後40年間、心臓カテーテル検査および治療に従事。虚血性心疾患における心臓カテーテル治療、冠動脈インターベンションに造詣が深い。

>> ハートケア情報委員会 >> ハートに役立つ情報:ドクターズコラム>> 第43回 心臓病、市販薬で大丈夫?...