ドクターズコラム

ハートケア情報委員会のドクターが狭心症・心筋梗塞の治療法など、狭心症・心筋梗塞に関するさまざまな情報をお伝えします。

第14回 狭心症について

東海大学医学部付属病院教授 伊苅 裕二

●狭心症になっても、病院にかからない患者さんが多いというのが現状のようですね。「こういう症状があれば、狭心症」ということがあれば、教えてください。また、狭心症と似たような症状が出る病気があれば教えてください。?

東海大学医学部付属病院教授 伊苅 裕二 狭心症は体を動かした時、例えば階段を上った時や走った時などに胸が締め付けられるような痛みがあり、少し休むと数分で痛みが収まるのが典型的な特長です。痛みの場所はほとんどが胸ですが、アゴ、お腹、肩など色々な場所が痛む場合もあるので、痛みの場所で判断することは困難です。狭心症は、体を動かした時に痛み、休んでいると収まるものですから、「胸を押して痛む」というのは狭心症ではないと考えられます。狭心症による胸痛の長さは5~10分が一般的で、長くても30分程度です。従って、「何時間も胸が痛む」というのは狭心症でない場合がほとんどです。また、患者さんの多くは、じっとしている時に胸が痛む方が動いている時に胸が痛むより重症だと考え、「動いた時に数分胸が痛む」という狭心症の典型的な症状は「大したことはない」、「ちょっと疲れているだけ」と思い込み、見落とされているケースが圧倒的に多いのが実情です。痛みの強さですが、これは患者さんによって大きく異なり、激烈な痛みを感じる人から軽い痛みしか感じない人まで様々です。

「動いた時に数分間痛み、数分休むと痛みが収まる」という症状は狭心症に特有のもので、他の病気で同様の症状が出るということはありません。ですから、専門医が問診を行えば、精密検査をする前に狭心症の有無はほぼ分かります。狭心症と疑わしき症状が出たら、すぐに循環器科、心臓内科で受診してください。糖尿病などをお持ちの患者さんは、狭心症の痛みを感じない(無症候性心筋虚血)場合もあり、発見が遅れることがありますので定期的に健康診断を受診してください。

●そもそも狭心症って、そんなに簡単になるものなのでしょうか?
 
 簡単になります。かつて、狭心症は簡単になる病気ではなかったのですが、生活習慣の欧米化に伴い、とてもかかりやすい病気になってきました。アメリカに比べれば、まだ少ないですが、日本でも狭心症の患者さんはどんどん増えています。また、狭心症には遺伝的要素も含まれ、ご家族で心筋梗塞や狭心症にかかった人がいる場合は、発症のリスクは高くなります。ただし、例えば両親とも心筋梗塞、狭心症にかかったことがないという場合においても、狭心症にかからないというわけではなく、高血圧、高脂血症、糖尿病、喫煙習慣といった危険因子を持った人は要注意です。一般的に狭心症や心筋梗塞はある程度の年齢以降発症しやすいと考えられていますが、喫煙習慣のある30代くらいの若い方が心臓発作を起こし、病院に運ばれることも少なありません。タバコは百害あって一利なし。一刻も早く禁煙されることをお勧めします。また、これらの危険因子を複数持っている場合、狭心症発症リスクは足し算ではなく、掛け算で高くなりますので、特に注意する必要があります。

●心臓の発作を起こしやすい季節、時間帯などはありますか?
 
 発作は一年中起こる可能性があります。一般的には、冬の寒い時期に多いと言われていますが、夏の暑い時期には脱水症状により、発作が誘発されることも少なくありません。また春や秋など比較的気候が穏やかな季節にも発作は起こります。一日の中では、明け方の起き出す時間帯に多いと言われていますが、他の時間帯に比べ、若干多い程度です。また、断熱性の低い日本の家屋では、特に風呂場の脱衣所が寒く、お風呂に入る際に急激な寒冷刺激を受けることで発作を起こすこともあるようです。逆に、北海道などの断熱性の高い家屋では、お風呂での発作は少ないという話もあります。


東海大学医学部付属病院教授 伊苅 裕二
【プロフィール】
名古屋大学医学部卒業。
東京大学医学部にて医学博士取得。
三井記念病院、ワシントン大学、再び三井記念病院勤務を経た後、
現在、東海大学医学部付属病院(神奈川県伊勢原市)教授。
循環器内科学、心血管インターベンション、血管生物学を専門とし、
数々の論文を執筆。カテーテル等の医療機器の開発にも従事。