ドクターズコラム

ハートケア情報委員会のドクターが狭心症・心筋梗塞の治療法など、狭心症・心筋梗塞に関するさまざまな情報をお伝えします。

第15回 喫煙と心臓病の関係

埼玉県川越市 平成クリニック理事長 高山 泰雄

●心臓病の危険因子の一つとして喫煙が挙げられますが、先生のところに来院される喫煙習慣がある患者さんには、どのようにお話されているのでしょうか?

埼玉県川越市 平成クリニック理事長 高山 泰雄 当院では、初診で喫煙習慣がある患者さんには、まず禁煙してから来てくださいと話しています。喫煙は、心筋梗塞や脳卒中を引き起こす動脈硬化症の危険因子になるだけでなく、副流煙によって喫煙者本人以上に周囲の人にも迷惑をかけます。真剣に体のことを考えるのであれば、すぐにやめるべきでしょう。
 喫煙により動脈硬化性疾患を発症するリスクが高まることは多くの研究結果からも明らかになっています。では、なぜ喫煙が体に悪いのかというと、いくつかの理由があります。まず、喫煙により、いわゆる善玉コレステロール(HDLコレステロール)が減少、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が増加するので、血管の内側にコレステロールが溜まりやすくなります。加えて、血小板の粘度が高まりますので、血液がどろどろになって固まりやすくなります。また、一酸化炭素の血中濃度が上がるので、動脈の内側の壁を傷つける危険性が高まります。動物実験でもタバコの煙に晒された後、血液の成分が血管壁の中に入りやすくなります。
 特に、糖尿病や高血圧など他の危険因子がある方が喫煙を続けると、狭心症や心筋梗塞の発生率を数倍に増加させるという報告もあります。死因となる病気というと、がんに注目しがちですが、実は、心筋梗塞、脳卒中をはじめとした動脈硬化性疾患による死亡者は、がんや事故などによる死亡者より多いのが現実です。「自分の体は自分で守る」という強い意志をもって、危険因子を取り除く努力が必要です。心臓や血管の年齢を算定する式では、喫煙は糖尿病と同じくらいのリスクがありますから。


●首都圏におけるタクシー内での全面禁煙や神奈川県での公共スペースにおける禁煙はじめ、禁煙に対する市民の意識は随分高まってきているように思いますが。
 
 それはいい傾向でしょう。昨今の禁煙化で、喫煙スペースを車内に求め、1メーター走ってもらう間に喫煙するという話を耳にしたことがあります。タクシーはかつて「走る喫煙室」と呼ばれていたように、密室で空気の循環が無く、副流煙にさらされる空間となります。愛煙家の人には他人の煙の害は理解しにくいことかもしれませんが、喫煙習慣のない人にとっては、においなどの不快感だけでなく、健康面から考えても大変な迷惑です。タクシーの運転手さんは、お客さんの都合で否応なく喫煙空間に晒され、それに加え、信号待ちでのイライラや時として発生する乗客とのトラブル、安全走行と乗客を探すために常に外部の情報に気を配るなど、非常にストレスの多い環境にあります。このような状況下では、血圧を上昇させ、心臓の収縮を促す物質が多量に分泌され、さらに狭い車の中で長時間同じ姿勢を続けることも加わり、不整脈、急性冠不全、脳血管障害や肺梗塞のような疾患が発症し、不幸な転帰をとります。地震などの災害地で不安感、ストレスに晒され、狭い場所で生活を続けた比較的喫煙の影響が少ない方々の中に先にお話したような疾患が発症していることは、ニュースなどでよく見聞きすることです。二重三重の危険に晒されているタクシー運転手さんでは、一般的な労働者と比較すると、心疾患の罹患率は二倍近くに増加し、心臓が原因となる突然死の割合も高いという調査報告もあります。
 まず、自分の意志で実践が可能な禁煙をなさったらいかがですか!!
 ここまで健康被害が明確に示されていますから、何かきっかけを作ったり、家族や知人の協力を得たりして、禁煙に取り組むとよいでしょう。なお、禁煙中の方に喫煙を勧めることは絶対にやめてください。

埼玉県川越市 平成クリニック理事長 高山泰雄
【プロフィール】
群馬大学医学部卒業。
群馬大学医学部付属病院第二内科、同大学院医学研究科、東京
女子医大心臓血圧研究所内科、立正佼成会付属佼成病院麻酔科、
榊原記念病院内科、米・スタンフォード大学病院循環器内科留学を
経て、1989年、医療法人社団平成クリニックを開設。
循環器疾患を専門に地域医療に従事。

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