ドクターズコラム

ハートケア情報委員会のドクターが狭心症・心筋梗塞の予防法や治療法など、狭心症・心筋梗塞に関するさまざまな情報をお伝えします。

第41回 医師との関係づくりは?

東海大学医学部付属病院教授 伊苅裕二

●今まで健康には自信を持っていたのですが、狭心症と診断されてしまいました。先生から出来るだけたくさんの情報を教えて頂き、日々の生活に気をつけて元気に過ごしたいと思っていますが、先生に何をどこまで聞いていいのか分かりません。先生とのコミュニケーションにおいて、何か良い方法があれば、教えてください。(60代 男性)

東海大学医学部付属病院教授 伊苅裕二 健康に自信がおありだったにも関わらず、狭心症と診断されたことは、さぞかし驚かれたことと思います。実は、今回ご相談をくださった方だけでなく、胸の痛みなどの兆候を感じず、たまたま別の理由で行った病院で、突然「狭心症です」と告げられてショックを受けたという方は少なくありません。しかし、よくよく聞いてみると、タバコを吸う習慣があったり、睡眠時間が不規則だったり、運動をほとんどしていなかったり、カロリーの高い食事が多かったりと、原因はどこかにあることが多いのですが。そして、あごや背中の痛み、胃の不快感など、狭心症や心筋梗塞といった心臓の疾患とは思えない症状も多く、見逃されがちなのも事実です。このコラムでも何度かご紹介しましたが、「動くと痛みや息苦しさなどがでる。そして、5分くらいじっとしていると治る」という場合、ほとんど狭心症ですので、甘く見ることなく、必ず一度、循環器科などの専門医に診てもらって下さい。

 さて、「医師に何をどこまで聞けばいいのか分かりません」というご相談ですが、気にすることなく、なんでも聞いたらいいと思います。遠慮することは全くありません。山崎豊子さんの代表作「白い巨塔」のように、かつては患者さんのことなど顧みることのない権威主義の医師がいたことも確かにありましたが、今の日本にそのような感覚で患者さんの治療にあたっている医師はほとんどいないでしょう。患者さん抜きの医療など、本来あり得ません。世間が医師を監視する目も厳しくなり、利己的な考えで医療にあたることもできなくなってきています。

 そもそも病院に来ているのは、体にどこか不調なところがあるから医師という病気の専門家に相談をしているわけです。特に心臓は全身に血液を送り出すという役割を果たし、命をつかさどる大事な器官ですから、「こんなこと聞いて先生にいやな顔をされたらどうしよう」などと、考えている場合ではありません。遠慮してしまったがために、自分の体におこっている大事な症状などを伝え損ねたり、気になることを聞きそびれたりしてしまっては、命にかかわることもあります。ですから、遠慮せず、些細なことでも聞いて全然問題ないのです。医師は、ただ病気を治すだけでなく、そのような患者さんの不安にこたえることが仕事です。気になることの程度は、一人ひとりに差があります。ですから、どの質問が大事とか大事でないということを割り切ることはできないのです。積極的に質問して下さい。もちろん、お医者さんに私生活を聞いては駄目ですよ。(笑)

 正直に申し上げると、医師の側も気になるところは聞いて頂いた方がやりやすいのです。患者さんが黙ったままで、こちらが一方的にしゃべっているというのは、やりにくいのです。そのような場合、患者さんの方から「もう十分聞いたよ」ということで席をお立ちになることはなく、聞きたいことを聞けるまではしっくりこないご様子で、医師の側も何を知りたいのか、一生懸命探っているという状態なのです。ですから、ご自分から、“これこれを知りたい”、“これが気になる”、とおっしゃってくれた方がむしろありがたいのです。

 いつもは心臓病でかかっていても、「今日は便秘だから便秘の薬が欲しいなあ」ということもあると思います。その場合、「便秘の薬を下さい」、「はい。出しましょう」となると、だいたい皆さん満足して外来からお帰りになります。日によって、医師に相談したいことが変わるのは当然です。ですから、「心臓病で診てもらっているんだから心臓の話しか聞いてはいけない」、ではなく、ご自分の体のことであれば、何を相談しても良いのです。

 外来では毎回、「今日はいかがですか?」と聞かれると思いますが、その時に「今日は、2つ聞きたいことがあります」など、はっきり医師に伝えましょう。それが結果的にお互いにとってよいコミュニケーションになるのです。


■関連リンク:
第6回 問診の重要性|ドクターズコラム|ハートケア情報委員会
http://heartinfo.jp/column/article/6.php
第16回 狭心症と診断されるまで 専門医への相談が一番の近道|ドクターズコラム|ハートケア情報委員会
http://heartinfo.jp/column/article/post_9.php

東海大学医学部付属病院教授 伊苅 裕二
【プロフィール】
名古屋大学医学部卒業。
東京大学医学部にて医学博士取得。
三井記念病院、ワシントン大学、再び三井記念病院勤務を経た後、
現在、東海大学医学部付属病院(神奈川県伊勢原市)教授。
循環器内科学、心血管インターベンション、血管生物学を専門とし、
数々の論文を執筆。カテーテル等の医療機器の開発にも従事。